がんは中高年の方に多く見られますが、若い方の婦人科がん(子宮頚がん)も増加傾向があります。当然の事ながら、早期にがんが発見されれば子宮や乳房を温存する縮小手術で済む場合も有ります。
特に、20歳、30歳代の若い女性の検診率が低く、この年代にがんが増えているので、定期的ながん検診
をお勧めしています。
当クリニックでもがん検診を行っていますが、子宮頚がん検診以外の卵巣がん検診などは、公費負担がありませんので、無症状で純粋にがん検診を希望される場合は健康保険の適応が認められなく、自費診療になります。症状を伴う場合は健康保険が使えます。費用は検査内容によって異なります。
1.子宮頸がん検診
婦人科がんで一番多いのは、子宮頸がんで、子宮がんの約70%を占めます。子宮の入り口にできることから、定期検診さえしていれば、比較的発見しやすいので、その間に
がんができて、進行がんで発見されることはまずありません。不正出血が時々あっても診察に行かなかったとか、子宮がん検診を一度も受けず、出血や帯下などの症状を認めて
からがんを発見した場合には、すでに進行している場合が多く、根治手術ができない場合もあり、一旦手術不能な進行がんになると、他のがんと同様で根治が難しくなります。
子宮頚がんの主な発生原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)type16、18、31、33、35、45、52、58などの
ハイリスクHPVと呼ばれるウイルス感染です。性行為によって感染し、長い時間を経て、前がん病変と呼ばれるまだがんではない病態を経て、
初期がんに発展します。しかし、通常、これらのHPVに感染しても自然に治癒することが多く、がんに発展する人は少数です。現在では、予防(ワクチン接種)と
定期検診さえ怠らなければ、心配の無い感染といえます。
尖形コンジローム
(Condyloma acuminatum)は、ヒトパピローマウイルス6、11型(ローリスク型HPVと呼ばれる)などが原因となるウイルス性性感染症で、生殖器と
その周辺に発症する、淡紅色ないし褐色の病変で特徴的な形態を示し、視診による診断が可能である。自然治癒が多い良性病変でありますが、パピローマウイルスの型によっては悪性化にも
注意しながら経過観察することが必要となる。頚がん予防ワクチンとして認可されたガーダシルはこのHPV
(type 6、11)に対する抗体を作ります。
初交年齢が低年齢化し、コンドームを使用しない傾向のある若い人が増えた現在、20歳代の女性でも、前がん病変や初期がんの状態で発見される事が多くなってきました。誰がそのウイルスを持っているか分からないので(20才代の女性は30%前後のHPV陽性率
があると言われています)、念のために子宮頚がん検診を受けた方がより安心です。20才代から子宮がん検診を受けることをお勧めします。
子宮頸がんの検診費は基本的には自費ですが名古屋市子宮がん診(20才以上)の場合は2年に1回自己負担金500円で検査ができます。さらに、4月1日時点で20,25,30,35,40才のいずれかに該当する人は無料券が配られます。子宮頚がんの原因であるHPVの検査
(HPV-DNA同定;type18,16同定、その他の中・高リスク型の検査)は費用が自費で4800円です。
2.子宮体がん検診
子宮体部に発生する子宮体がんは、近年増加する傾向にあります。このがんの特徴としは、子宮頸がんに比べ、
比較的高齢者に多く見られ、90%以上の症例が何らかの不正性器出血を伴っています。これらのことから、特に閉経後に不正出血が有る場合は要注意で、子宮体がんを念頭に置いた
検査をする必要があります。
子宮内膜の細胞検査、組織検査および超音波検査を行うことで、比較的容易に発見されることが多いので、症状が有ったら必ず受診しましょう(保険適応できます)。
無症状の方の体がん検診は頚がんほどのメリットがなく、当クリニックでは特にお勧めはしていません。それより、月経不順や不正出血や下腹部痛などがあれば一度は受診してみて下さい。
超音波断層法によりある程度の子宮体がんスクリ−ニングは可能ですし、他の婦人科疾患が偶然にが発見されることもあるかも知れません。尚、無症状での子宮体がん検診は自費になりますが、
不正性器出血、褐色帯下、月経異常(月経不順、月経過多)などの症状が有る方は名古屋市子宮頸がん検診と同時に体がん検診を受けることが出来ます
(頚がん+体がん検診の費用は1,000円)。
3.卵巣がん検診
卵巣がんの約70%の症例は、進行がんで発見されます。これは卵巣が腹腔内にある臓器で、外からは分かりにくいことが大きな原因です。したがって、症状が出たときには既に進行している状態が多いということになります。初期がんで発見された症例の多くは、何らかの症状を訴えて産婦人科を受診し、たまたま行った超音波検査で発見されたりすることが多いようです。すなわち、卵巣がんは定期的な検診を行うことで、早期に発見出来る可能性が有りますが、がん検診としてはコストパフォーマンスが低く、無料での検診はありません。卵巣腫瘍の場合、超音波診断では悪性の所見が認められても、最終的には手術により組織学的(顕微鏡で調べる)に悪性とか良性とかの診断が確定します。
月経障害、下腹部痛、月経不順などの症状があれば、産婦人科を受診して下さい。そうすればひょっとして卵巣がんが発見されるきっかけになるかも知れません。卵巣がん検診費(無症状での検診は自費、症状があって行う超音波診断は保険適応です)。
4.乳がん検診
乳がん検診に関しては、日本では基本的に治療を外科が主体で行っている関係で、外科で行われる場合が多いのが現状です。当クリニックでも名古屋市内に在籍の方に対して、視触診による乳がん検診を行っていましたが、平成17年度より、公費負担による乳がん検診はマンモグラフィー併用方式導入のため、マンモグラフィ−ができる施設を受診される事を
お勧めします。乳房にしこりがあるとか痛みがあるときは保険で診察できます。当クリニックでは乳腺専用の超音波プローブを備えていますので、ご相談下さい。
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